世界の食品業界に起こっていること

NHK総合 【クローズアップ現代+】2020/10/22より (NHKの許可済)

 農薬の規制強化で日本農業は対策に

食をめぐる“新潮流”戦略求められるJAPANブランド高い品質を武器に世界の消費者を魅了してきた日本の農産物。ところが、今世界で起きている新たな潮流への対応を迫られている。
そのひとつが農薬の規制強化。
農薬の基準を独自に引き上げる国が相次ぎ日本の基準を満たしていても輸出ができなくなる懸念が広がっている。
もうひとつの潮流は有機農産物を巡る熾烈な競争。今、EUに最も多く輸出しているのは中国。
日本はその150分の1。

EU向け有機農産物の輸出国:

1位・中国415トン、2位・エクアドル278トン、3位・ドミニカ275トン、4位・ウクライナ267トン、5位・トルコ264トン、6位・ペルー207トン、7位・米国171トン、8位・UAE128トン、9位・インド126トン、10位・ブラジル72トン、52位・日本2.8トン。
その差を埋めようと有機農産物の産地拡大の取り組みが始まっている。


タイへのリンゴ輸出でいくつかの農薬の中で1種類の農薬が入っていたため輸出ができなくなった

 食をめぐる“新潮流”JAPANブランドの思わぬ試練

 東京・大田区のアジアを中心に高級フルーツや野菜を輸出する会社は現地の百貨店に売り場を構え 

 富裕層を中心に顧客を増やしてきた。ところが6月重要な市場のひとつ、タイが一部の農薬を使用 

 禁止にすると発表した。
 来年から、対象の農薬が検出されないことが輸出の条件となった。禁止された農薬は日本で一般的 

 に使われているため影響は大きいとみている。
 産地にも戸惑いが広がっている。
 青森県のりんご農家・片山寿伸は20年ほど前に、いち早く海外輸出に乗り出し国内の2倍ほどの 

 価格で販売してきた。
 中でもタイは去年輸出を始めたばかりでこれから拡大したいと考えていた国だった。
 産地では、品質や収量を安定させるため県などが定めた基準に従って農薬を使用する。含まれる成 

 分は36種類。
 いずれも日本の安全基準をクリアしたもの。しかしそのうちの1つの殺虫剤がタイで禁止されるこ

 とになった。
 (輸出会社株式会社サン・フレッシュジャパン・落合亜希子社長のコメント)

 

 「有機茶の輸出促進」JAPANブランドで世界に挑む

 北米やEUに13年前から輸出を行ってきた鹿児島・志布志の製茶会社は、化学農薬や化学肥料を 

 使わない有機栽培に乗り出している。
 お茶の需要が低迷する中、県が2年前から推し進めるのが有機茶の輸出促進。
 これまでの栽培方法では各国の農薬規制の壁にぶつかる可能性があるが、有機栽培なら輸出のチャ 

 ンスが広がるという。
 しかし、悩みの種は害虫。

 化学農薬なしでの栽培は虫食いのリスクが伴う。そこで害虫を寄せつけないために新たな装置を開 

 発した。
 風速40メートルの風と水の圧力で、ダニや害虫を吹き飛ばすという。さらに、米ぬかを散布すること
で害虫を防ごうとしている。
 世界の潮流に合わせた有機栽培。
 ところがどう収益をあげられるかが課題になっている。
 有機栽培は、通常の栽培に比べて2割から3割コストが増えるが価格に転嫁するのは難しいとい 

 う。価格は通常の約2倍程度。

 

ドローンで米作の害虫をピンポイントで農薬使用量45割削減、生産は4倍に
 値は張るものの、この3年で生産量が4倍に増えているコメがある。
 最先端の技術を駆使することで可能なかぎり農薬を減らして作られている。
 ドローンが田んぼの上を飛び回り雑草や虫食いに遭った葉の部分を狙ってピンポイントで農薬を散 

 布することができる。
 これを可能にしているのがドローンに搭載された高精細カメラ。
 撮影した画像を基に雑草や虫食いの葉をAIが見つけるため必要な場所に必要なだけ農薬を散布す

 ることが可能になった。
 この技術を取り入れた農家では4割から5割程度農薬の使用量を削減。
 農薬にかかる費用も半分程度に抑えることができた。
 IT企業が自治体や産地と共同で取り組むプロジェクト。
 技術の改良を重ねながら将来的には海外への販売を考えている。
 上記情報は:製茶会社・堀口大輔副社長、IT企業・星野祐輝、コメ農家、IT企業・菅谷俊二社

 長のコメント。石川県農林総合研究 

 センター農業試験場(金沢)の映像より